本展第一弾(2007年1月10日〜2月2日開催)では、防衛省の協力によって藤田嗣治の戦争画「南昌新飛行場爆撃ノ図」の出品が実現した。それに現代美術作家の横尾忠則、杉本博司、宮島達男、神谷徹を交え、さらに長崎天主堂の被爆した聖像を立命館大学平和ミュージアムの協力によってあわせて展示した。この展覧会は、政治や経済ではなく、芸術的視点に立ったアプローチによって、「戦争と芸術」の関係性とそこに横たわる様々な問題を浮き彫りにしようとするものだったが、各方面からの注目を集め、多くの反響を得ることができた。副題の「美の恐怖と幻影」とは、芸術によって生みだされるイメージがいかに人々に影響をあたえるのか、また、歴史的な視点における芸術の役割とは何なのか、という問いかけを含意している。
本展は、その第二弾という位置づけで開催され、第一弾と同様、防衛省の協力により出品される戦争画と現代作家の作品から構成される。今回は、戦時中、藤田嗣治、宮本三郎などと肩を並べた中村研一の戦争画「神風特別攻撃隊の海軍機の活躍」を紹介する。それに加えて細江英公の「死の灰」シリーズの写真作品と映像作品「原爆とへそ」や中西夏之の50年代の絵画作品、横尾忠則の最新絵画作品5点、太郎千恵蔵の最新大作絵画、トマス・デマンドの大作写真作品2点、ダレン・アーモンドの映像作品とオブジェが出展される。またフランスの哲学者で「事故の博物館」展(2003年・カルティエ現代美術財団)の企画や「純粋戦争」、「パニック都市」などの著者としても有名なポール・ヴィリリオが、本展に対する深い理解と賛同を表明し、書き下ろしのテキストによって展覧会に参加する。
シリーズ第二弾「戦争と芸術―美の恐怖と幻影」展は、各作家の作品を通じて「人間存在」の本源的な意味をも問いかけていくものとなるだろう。
本展キュレーター
飯田高誉(国際藝術研究センター所長) |